アイルランドの音楽には不思議な力があると感じた。
彼の地の人々が奏でる音を聴きながら目を閉じると、遠い時代、子供の頃の忘れていた 記憶が封を切ったように甦ってくる。
はるか昔の出来事がアイルランドの音楽と共に記録フィルムの
ように脳の中で再生さ れていく。
この農夫は83歳。
ロシア革命の年にアイルランド西部の田舎で生まれた。
そして今年、83度目の冬を迎えようとしている。
重労働のあとは音楽でくつろぐ。
子供のころから音楽こそが唯一の娯楽だったという。
秋が深まるアイルランド。このあたりの田園風景は緑が少ない。
荒涼とした厳しい大地に単調なメロディーとリズムが響く。
しかしここでは、『 何も急ぐことなく日々暮らしていけばいい 』
という農民たちが 暖炉の前でいまも音を紡ぎ楽しんでいる。
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