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まるで過去が今そこで起こっていることのように、
想像させてくれる風景がある。

たとえば、
空から撮影されたサバンナの水場に続く動物たちの足あとの写真。
直径10メートルほどの円形の小さな水たまりへと、
放射状に足あとが向かっている。
それは何十年、何百年と水場に繰り返しやってきた動物によって
できたもの。

その写真を見たとき、動物はいっさい写っていないにもかかわらず
ほんの少し前にシマウマやヌー、ライオンたちが水場に向かい、
喉を潤しにやってきたのだろうという想像が生まれた。

それと同じような風景がある。
この写真はドルメンと呼ばれる約3000年前の遺跡である。
3枚の岩を組み立てたこの古代人の墓は、アイルランドの大西洋を望む丘のうえにある。

ヨーロッパからいくつもの海を越えこの地に辿り着いた
当時の人々は何をおもったのだろうか。
ここが最果ての地なのか、
それともこの先にまだ人の住む土地があるのか。

コロンブスがアメリカ大陸へのルートを見出すまで
この地にやってきた人々は、足下に広がる海を見ながら
そんなことを想像したのだろう。

古代から月を見ながら多くの物語が創作されたように
1つの風景から物語は創られる。
流れゆく日常の風景のなかにも、じっと目を凝らせば
物語は生まれる。


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