■血糖値が高いと血管が傷つき脳卒中を招きやすく、その証拠に脳梗塞の原因の1/4は高血糖
【糖尿病の患者数は推定2210万人】
脳のさまざまな病気の中でも、深刻なものの1つが脳卒中といえるでしょう。脳卒中は、脳の血管がつまったり、破れたりして、脳が障害を受ける病気。血管がつまるタイプが脳梗塞、血管が破れるタイプが脳出血やクモ膜下出血です。
現在、脳卒中の約7割を脳梗塞が占めています。脳卒中は、ガン、心臓病につぐ日本人の死因の第3位。しかも、1年間に脳卒中になる人は、ガンになる人よりも多いのです。
脳卒中の原因はさまざまですが、中でも注目されているのが糖尿病。糖尿病は、脳梗塞の原因の24%を占め、第1位の高血圧(61%)についで第2位という研究報告もあります。
2007(平成19)年の国の調査によれば、糖尿病の患者数は890万人、糖尿病の予備軍も含めた患者数は2210万人にも上ると推定されています。現在、40歳以上の3人に1人が、糖尿病か高血糖という調査報告もあります。
【脳梗塞の発症率は2〜3倍】
高血糖とは、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が以上に高くなった状態のこと。血糖値は通常、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって適正な値に調節されています。しかし、何らかの原因でインスリンの分泌が減ったり、働きが低下したりすると高血糖になるのです。高血糖の慢性化した状態が糖尿病です。
糖尿病は、初期にはほとんど自覚症状が現れません。そのため、気づかないうちに悪化して、さまざまな合併症を引き起こすことが多いのです。これが糖尿病の怖い点といえるでしょう。
高血糖になると、血液がねばついて血流が悪くなり、血栓(血の塊)ができやすくなります。さらに、血液中の余分な糖は、たんぱく質と結びついて血管を傷つける糖化たんぱくに変化します。その結果、動脈硬化(動脈の老化)が進んで、脳卒中をはじめ、心臓病や腎不全、網膜症など実に多くの病気や症状を招きます。さらに、高血糖や糖尿病の人は、ガンや認知症、さまざまな感染症になりやすいこともわかっています。
最近の研究によれば、食後に軽い高血糖になっても、動脈硬化が起こることが明らかになってきました。この状態を放置すると、健康な人に比べて2〜4倍の速さで動脈硬化が進行するのです。
実際に、都道府県別の患者数を調べた最近の調査では、糖尿病の患者数の多い県は、脳卒中の患者数も多いことが明らかになっています。福岡県久山町の調査では、糖尿病の人の脳梗塞の発症率は、健康な人に比べて男性が約3倍、女性が約2倍という結果が出ています。
糖尿病の人は、脳卒中の発症率が健康な人の約2倍という九州大学の研究報告もあります。
糖尿病には2種類あります。1つは、ウイルス(細菌より小さな微生物)の感染などによってインスリンが全く分泌されなくなるI型糖尿病。もう1つは、過食や偏食、運動不足、過剰なストレスなどによってインスリンの分泌量や働きが低下して起こるU型糖尿病です。このうち、日本人の糖尿病は9割がU型糖尿病です。
つまり、高血糖や糖尿病、ひいては脳卒中を予防・改善するには、生活習慣を見直すことが肝心といえます。食生活では、食べすぎや糖分のとりすぎを控え、1日3食の規則正しい食事を心がけましょう。さらに、タマネギや納豆など血糖値の上昇を抑える食品を積極的に食べると効果が上がります。
手軽にできる運動としては、足の筋肉をよく使うウォーキングがおすすめ。その中でも、階段歩きは、体内の糖を効率よく減らす運動として注目されています。
※引用 夢21 12月号 平成21年12月1日発行 (C) (株)わかさ |