◇手のしびれやめまいを放置するのは危険
年とともに、私たちの血管は動脈硬化(動脈の老化)を起こします。動脈硬化といえば、心臓の血管(冠動脈など)や脳の血管で起こることが知られていますが、実は首の血管も、動脈硬化が多く発生する部分なのです。
動脈硬化は、主に血管の内側の壁が傷つくことがきっかけで起こります。すると、その傷口から血液中のコレステロール(脂肪の一種)や中性脂肪が入り込み、粥腫という粥状の塊を作ってしまいます。こうなれば血管の内部は狭くなり、つまりやすくなるのです。
このような動脈硬化によって、頸動脈(首の動脈)が狭くなる病気が頸動脈狭窄症。総頸動脈狭窄症を起こせば、脳の血管が一時的につまる「一過性脳虚血発作」が起こることがあります。これは、片側の手がしびれる、力が抜ける、ろれつが回らなくなる、めまいやふらつきがあるといった症状として現れます。
これらは一時的な症状であり、数秒から数分で元に戻りますが、だからといって安心というわけにはいきません。一過性脳虚血発作を起こしたあとに脳梗塞を起こす危険度は、1ヶ月以内で21%、1年以内で50%といわれています。発作を示す症状が現れたら、そのまま放置せずに、すぐ専門医の診察を受けてください。
◇首の動脈硬化が簡単に見つかる検査法
よく、「首の血管は全身の血管の状態を映す鏡(窓)」といわれます。実際、首はほかの部位(心臓や脳など)よりも早く動脈硬化が現れやすく、首の動脈硬化が見られるときは、ほかの部位の血管も同様に動脈硬化を起こしている可能性が大きいのです。
しかし、これまで首に限らず、動脈硬化を肉眼で確認するのは難しいことでした。最近ようやく、超音波検査(エコー検査ともいう)という新しい検査法が登場して、簡単に首の血管の状態がわかるようになっています。
超音波検査は、皮膚の上から機械で超音波を当てて、その反射の動きをもとに、血管の立体的な画像をコンピューターの画面に表示します。血管の状態が鮮明に見えるばかりでなく、皮膚を切ったり体に何かを挿入したりする必要がないため、体への負担はほとんどありません。
超音波検査で頸動脈狭窄症が認められたときは、その結果に基づいて薬物療法や食事療法が行われることになります。さらに、自覚症状をほとんど感じなくても、血管が60%以上狭くなっていれば、血管をふくらませたり、つまった血の塊を取り除いたりする治療が必要になります。心臓の冠動脈に異常が見つかれば、そちらのほうの治療も必要です。
40歳を過ぎたら、1年に1度は首の血管の超音波検査を受けて、動脈硬化の有無を調べましょう。
※引用 夢21 2007年8月号掲載記事 (c)わかさ出版 |