◇首の動脈も冠動脈も枝分かれが多い
動脈が老化して、つまることを動脈硬化といいます。このことをご存知の人も多いでしょう。動脈硬化は、全身のさまざまな動脈に起こりますが、最近、大きな問題となっているのが首の動脈硬化(正式には「頸動脈硬化症」と呼ぶ。)な座なら、首の動脈硬化は、脳梗塞の重大原因となっているからです。
頭部に向かう首の動脈には、総頸動脈と椎骨動脈があり、総頸動脈は、下あごの少し下あたりで内頸動脈と外頸動脈に分かれます。心臓から送り出された血液は、内頸動脈を通って脳に、外頸動脈を通って顔に送られます。
これらの首の動脈は、動脈硬化を起こしやすい構造をしているといえるでしょう。首の動脈は、枝分かれがとても多い動脈。動脈が枝分かれする部分では、血流が渦を巻いたり、血管壁に圧力がかかったりしやすくなります。そうすると、その部分の血管壁が傷ついて、コレステロールや血小板(血液を固める働きのある血液中の成分)が付着し、血栓(血液の塊)ができやすくなります。
首の動脈でできた血栓は、血液壁からはがれて血流に乗り、脳まで流れていくことも少なくありません。このはがれた血栓が脳の血管をつまらせ、脳梗塞を起こすのです。脳梗塞は、心臓などでできた血栓によって起こることもあります。しかし、首の動脈は脳の近くで脳に直結しているだけに、首の動脈硬化は、脳梗塞を起こすおそれがより大きいといえるでしょう。
実は、首の動脈硬化が注目されるようになったのには、もう1つの理由があります。それは、首の動脈硬化が起こっている人は、心臓を取り巻いて心臓に栄養を送っている冠動脈にも、動脈硬化が起こっていることが多いため。冠動脈の動脈硬化が進めば、心筋梗塞が起こります。
では、首の動脈硬化と冠動脈の動脈硬化は、なぜ同時に起こるのでしょうか。それは、首の動脈と冠動脈が同じタイプの動脈で、枝分かれが多いからです。動脈硬化は、食生活の欧米化によるカロリーのとりすぎや、運動不足が重大原因。つまり、こうした生活習慣の人は、首の動脈も冠動脈も老化して、つまりやすいというわけです。
冠動脈の動脈硬化は、自覚症状がほとんどないため、見つけることは大変困難です。しかし、首の動脈は体の表面の近くにあり、首の動脈硬化は自覚症状が出ることもあるため、見つけやすいといえるでしょう。そこで、首の動脈硬化は、冠動脈の動脈硬化を発見し、心筋梗塞を防ぐ手がかりになるともいえます。
ただし、首の動脈は、血管の断面層の8割がつまっても、症状が出ない場合もあります。そのため、40歳以上の人は年1回以上、超音波検査で首の動脈の状態を調べたほうがいいでしょう。そして、首の動脈硬化が見つかった人は、すぐに冠動脈も調べてみましょう。それが、怖い心筋梗塞を防ぐ近道なのです。
※引用 夢21 2007年8月号掲載記事 (c)わかさ出版 |