Chapter1
そもそも人の印象は何で判断されるの?
会った瞬間は視覚からの情報しかないだけに、人の印象の決め手は、まず外見。とはいえ、容姿の良し悪しなどではなく、「雰囲気や身ぶり手ぶりなど、全体を見ています」と、阿部聡さん。
そして、人は相手のことを過去の記憶データと照らし合わせているのだとか。
「あの人に似ているな、こんなタイプだな、と、無意識下で判別・分類しています。相手が過去に会った人の記憶データ次第で、自分の印象が左右されることもあるわけです」(阿部さん)
【考えてみよう】
大勢の男性に好意を抱かせ、足繁く店に通わせる、クラブのホステスさんたち。彼女たちの間ではもはや「常識」ともいえる、印象アップのテクニックとは?
【答え】
お客様の来店時のお出迎えと帰りのお見送りだけは絶対にハズさず、最高の接客をすること。「いらっしゃいませ〜!」と笑顔で出迎えて、たとえすぐに別のテーブルに移ってしまっても、帰り際には「またいらして!」と腕など組んでサービス。このテクで相手の心をつかめる理由は、「会う時間の長短にかかわらず、印象の大部分は最初と最後で決まるのです。この2つがうまくいくと、相手は好印象を持つものです」(阿部さん)
Chapter2
印象のいい人、悪い人、分かれ目はどこに?
阿部さんによると、人間の頭脳は与えられる情報が少なくてもそれを補完し、全体を推察している。表情のちょっとした動きといった少ない情報でも、印象に大きな影響を及ぼすのが笑顔。
「ボノボなど一部のサルは、仲間とのコミュニケーションのために笑顔を作ることができますし、赤ちゃんが笑うと、周りの大人たちもつい笑顔になる。笑顔は相手に心を開いていることの表れ。当然、いい印象を持たれるでしょう」(阿部さん)
さらに、好印象・悪印象の判断にも、過去の記憶データが影響。特に理由もなく相手にイヤな印象を持った、そんなときは、「過去に似たような人からイヤな目に遭わされた記憶があるのかもしれませんね」(阿部さん)
Chapter3
記憶に残る印象、残らない印象の違い。
「たとえば、壁にたくさんの絵や写真が掛かっていて、ある一枚だけを覚えろと言われると、その一枚はしっかり覚えても、他の絵は見えていたにもかかわらず忘れてしまう。人間の脳は約1500億個の神経細胞でできていますが、それでも、見たものすべてを記憶することはできません」(阿部さん)
人の印象も、顔立ちや表情、声のトーン、雰囲気などトータルな情報から、特にインパクトの強い部分が印象として記憶に残る。あるいは「とってもいい人」という具合に全体像として一つにまとめて記憶される。
Chapter4
一度受けた印象はずっと変わらない?
「基本的には、記憶というものは一度刷り込まれたら変わることはありません」
と、阿部さん。では、もしも自分が誰かに「イヤな人」と思われてしまった場合、その印象はずっと変わらない?
阿部さんによると、
「1500億個しかない脳細胞を有効に使うために、脳の側頭葉の先端・側頭極という場所には、記憶を消去、または上書きする機能が備わっています。記憶そのものは変わらなくても、新たな体験をすることで、記憶も上書きされ新しいものにすり替わっていきます」
Chapter5
効果的に印象を残す方法を知ろう。
距離のとり方を調節して自分の存在感をアピール
印象は、人の全体像で作られる。そこで阿部さんは「自分を“存在”としてアピールして」。
服やメイクの細部にこだわるより、アイコンタクトや距離感などで、相手の心理に訴える。ただしこのとき、相手が第一子が否かによって、方法を変えるのがコツだ、と阿部さん。
「第一子や一人っ子は親の愛情を独占できた分、自分勝手で自分本位になりがちなので、くっつきすぎないほうがいい。逆に親の愛を兄や姉と分け合ってきた第二子以降は、わがままを通すことで愛情を確認したい甘えん坊。距離を縮めて、行為を表すようにします」
【考えてみよう】
心理的な作用を使って好印象を得る方法、他にはどんなものがあるのでしょう?
【答え】
阿部さんによると、相手と同じ声のトーン、同じペースで話し、呼吸やポーズも合わせるとよい。「身ぶり手ぶりはコミュニケーションの原点。相手が頬杖をついたり、テーブルに身を乗り出したら、自分もそうする。鏡のように真似をしていると、相手の心理状態がわかってきます。これを『ミラーニューロン』といって、自分だけもとのポーズに戻してみて、相手もつられるようならしめたもの。無意識に同じポーズをとるのは、警戒心を解いている、さらには好意を持っている証拠なのです」
※引用 阿部聡インタビュー記事 anan No.1490 2005.12.7 p36-37 (c)株式会社マガジンハウス2005 |