脈絡叢の腫瘍はかなり珍しいものです。脈絡叢というところは、脳の中の脳室というところにあって、髄液を産生します。脳室の容量は150mlほどで、髄液は一日400-500ml作られます。一日に3回ぐらいは入れ替わっていることになります。
この脈絡叢に腫瘍ができると1)髄液を産生するタイプかどうか2)髄液の流れを妨げているかどうか(塊として)が問題となります。どちらか、あるいは両方の場合でも、脳の髄液が多くなりすぎます。そのために脳の圧が上がってしまいます。
ご主人の朝の頭痛は恐らく脳の圧が明け方あがってしまうために起こっているものだと思います。そういった意味では、腫瘍を取ってしまえばいいのかもしれません・・・・
ただし、結構この場所の手術は難しいのです。後遺症その他を考えると・・・・薬だけでコントロールできるものならば薬だけにしたいと思うのも、脳外科医ならではの考えかもしれません。(逆に言えば、切りたがる傾向がある外科医にしては素晴らしい自制心かもしれませんね)
で、どうすればいいのか。
はっきりいって私にもわかりません。ただ、大学病院の良いところと悪いところをお話しておくのがいいと思います。
大学病院は一般的にカンファレンスで方針を決定します。大勢で方針を決めるわけです。私が在籍していた時代、その医局はそれはもう悪魔(天使?)のように厳しい医局でした。
毎週2回朝開かれるカンファレンスでは、「バカ」だ「なんとか」だは当たり前。あげくのはてには「お前が悪くした」といわれる始末でした。当然、手術中はメスやかんしが飛んでくるのは当たり前で、どじを踏もうものなら蹴られたり、殴られたりしました。
(そういった教育は良くないという意見もありますが、僕はそうとも思いません。競争ですからね。技術の習得にはそういった厳しさが必要だと信じています。今年から始まった研修医制度は週40時間勤務だそうです。いったいどうやってそれで医師としての技術を習得するのでしょうか。そして、殴る蹴るがなくてどうして医師から医者になれるのでしょうか。劣悪な労働環境で、亡くなった研修医がいたということに端を発しているようですが、少なくとも私の周囲にはそういった意見はありません。むしろ、家に帰れないのなんて当たり前。嫌ならやめればいいという意見が大勢を占めています。そういった過去があるからこそ、今は人様よりは金銭的には心配をしないで済む生活をさせていただいているわけです。と、これは余談でした。)
つまり、およそ大学病院では痒いところに手が届くような医療は無理な反面、間違った方向にはまずいかないというのが原則です。
勿論、昨今の医療事故の告発を見れば、どなたもご心配になると思います。でも、実際はそれよりもはるかに多くの患者さんが、ちゃんとした治療を受けられているのを忘れないでいただきたいのです。
ご主人の場合は、3人の脳外科医が判断されているようですね。そうすると、かなりな確率で正しい選択がなされていると思います。
また、脳内視鏡ですが、徐々に発達してきてはいますが、まだまだ一般的ではないのと脳外科の場合、顕微鏡を使うので他の科と比べてその有用性も低いということを知っておいてください。
これが、私の想像するところです。
で、何が足りないのかといえば、多分、最初の方針と何故違ったかということではないでしょうか。その点は率直に主治医に聞かれればいいと思います。また、当然症例数の少ない病気ですから、主治医も完全な自信はないと思います。その場合は、ほかの大学病院の脳神経外科の医師のセカンド・オピニオンを聞かれるのもいいと思います。
その旨を主治医に伝えて紹介してもらえばよいと思います。
あるいは、脳神経外科専門医を持っていて、脳外科のクリニックを開業されている先生に相談されるのも良いかもしれません。開業されている先生は押しなべてちゃんと時間をとって説明してくださるはずですから。
いろいろとご心配でしょうが、どうぞマイナスにならずにポジティブに行動なさってください。 |