お父様の具合はいかがですか。
一般論で申し上げることしかできないことをまずはお詫びしておきます。
さて、脳梗塞は長島監督や故小渕首相がなられた心臓から血栓が飛んで詰まってしまうタイプと、脳動脈硬化に伴って血管が細くなり詰まってしまうタイプの二通りあります。
いずれにせよ脳に血液が流れなくなり、結果として脳の神経細胞が壊されてしまいます。
このとき、比較的前者に多いのが出血性梗塞というものです。
体というものは良くできたもので、病気になると何とか治そうとする働きがあります。脳梗塞の場合も同じです。血液の流れが悪くなると、血圧を上げたり、血管を新生させたり(新しく作る)してなんとか血液の流れを保とうとします。ところが、しばしばそのために却って病気が悪化することがあるのです。
血液の流れを何とかしようとするあまり、かえって出血を起こしてしまう、これが出血性梗塞です。現状の医学ではなかなか防げません。
中にはその出血がひどく、お父様のように手術で血腫を取らなければならないこともあります。脳は骨で囲まれており、いわばお鉢の中にぷかぷかと浮いているようなものだと思ってください。そこに、出血が加わると中の圧が上がります。そうすると、正常な部分まで悪影響が出てしまいます。
薬で脳の圧を下げたり、手術で圧が上がった原因を取り除いたりするわけです。
その最初の圧の掛かり方がどの程度か、壊された脳神経細胞がどの程度かによって、後遺症その他が決まってきます。
残念ながら脳幹部梗塞がでているとすれば、かなり厳しい状況と考えざるを得ません。
脳はきのこのような形をしていますが、きのこのかさの部分が大脳、柄にあたる部分が脳幹部になります。大きな大脳のかなりな神経線維が細い脳幹部(柄の部分)につながっているのですが、言い換えればそこは、光ファイバーのようにものすごい数の神経が通っているのです。ですから、そこがやられたとなると、かなりな影響が出てしまうということになります。
特に脳幹部には「意識」「血圧などの生命維持」などの重要な中枢もあります。
お父様の状況が大脳レベルでの障害のために意識が悪いのか、それとも脳幹部のレベルでの障害のために悪いのか、それによって予後は大きく違ってくると思います。
また、まれならず見られるのが、体が心筋梗塞や脳梗塞、くも膜下出血や大手術のあとなどに全体の代謝を自動的に下げるということがあります。「低T3症候群」といいますが、この場合などは自然に意識が戻ってきたり、あるいは、甲状腺ホルモンを投与することで戻ってくることもあります。
ぴたっとした答えにはならなかったかもしれません。こういったご病気はむしろ周囲の方のほうが疲れて倒れてしまいがちです。長期戦になると思います。どうぞ、くれぐれもご自愛ください。
心より、お父様の回復をお祈りいたします。 |