ボケは大変不安になる病気です。多くの方、というよりもほとんどすべての日本人の悩みの種です。特に、ぼけた本人よりも周囲の家族の心労たるものすさまじいものです。
心中お察し申し上げます。
さて、このボケは社会的な面と医学的な面での二つのアプローチが必要な病気です。
まずは、医学的な面から。
大きく分けるとボケは3種類に分かれます。
第一に有名なアルツハイマー病です。これは、MRIなどで見ても脳は一見正常な様相を呈していますが、どんどんとボケの症状が進むものです。脳内でのアセチルコリンというホルモンにかかわる病気で、遺伝性が上げられています。
症状としては、日常生活の行動に制限が出る、たとえば用便、歩行、着替え、食事、身だしなみ、お金の管理ができない、入浴ができない、電話をかけることができないなどなどが上げられます。また、性格変化が初期に出るのも特徴です。特に、被害妄想はその代表的なものです。嫁があたしをいびっているなんてのはそうですね。
第二に脳血管性の痴呆が上げられます。脳梗塞や無症候性脳梗塞に伴って脳の機能が落ちてくるものです。日本人の場合、こちらのほうが多いとされています。症状はその梗塞巣によってまちまちです。まだら痴呆とも言います。
第三にその混合型、アルツハイマーと脳血管性の混合型があります。
お母様の場合は、どうやらアルツハイマー型の可能性がありますね。MRI、SPECT(脳血流検査)簡易知能検査などを行う必要はあります。
最近はいい薬もどんどん出てきていますので、まずは心配していないで、アルツハイマー専門の精神科か脳外科にいかれてみてください。
また、時に見忘れがちなのが正常圧水頭症という病気です。これは、脳の中の髄液は一日3回入れ替わっているのですが、年をとったり、脳の病気(くも膜下出血後など)で、その出し入れがうまく行かなくなってどんどんと脳室が大きくなってくるものを言います。
この場合は、腰から造影剤や放射性物質を入れてCTを時間を追ってとっていくことで分かります。症状は特徴的で、ボケ、歩行障害、尿失禁です。少なくともこれの鑑別だけはしなくてはなりません。
というのも、この場合は、脳室からおなかの中へシリコンチューブを使ってお水を流してやる手術をすると劇的に改善することがあるからです。
そして、もうひとつ大切なのが、初老期うつ病です。実は、ボケの不安はかなりなもので、ちょっとしたことから老人は鬱になってしまいます。たとえば、人の名前が思い出せない程度からぼけたぼけたという思い込みが始まり、活動性が落ちてしまいます。特に鬱の初期の場合、まったくボケと区別がつかないことがあります。これも専門家に任せる必要があります。
次に、社会的な面から見ますと、ボケは家族で見るには荷が重過ぎます。プロの集まった病院ですら手に負えないことがままあります。ましてや、ご家族ではどうしようもありません。
特に、ご家族にとっては、かつてはしゃきしゃきとして仕切っていたお母様がどうしようもなく情けない姿でいること自体トラウマとなってしまいます。ストレスになってしまいます。
ご家庭の状況、それこそ、バリアフリーかどうかなどからして問題です。そういった点をいろいろと判断して、介護施設でやっていくのか、自宅でがんばるのかが決まります。
ともすれば、自宅介護が美徳のようにも言われますが、そうではないと思います。あくまでも、残される人間を優先すべきです。もちろん、親孝行をするなといっているわけではありません。したほうがいいと思います。
ただ、世間体や何かで介護をした場合、元気な若い世代が犠牲となって社会的な死を選ぶことになりかねないと申し上げているのです。それだけ介護は大変なことなのです。
ですから、みもしない遠い親戚の意見などは無視していいのです。決してあなたの親御さんは子供の幸せを犠牲にして自分だけは助かろうなんてことは思っていないはずです。むしろ逆のはずです。だからこそ、ご自身の精神的な負担が増えるのです。
繰り返します。親を介護施設に入れたとしても決して自責の念にとらわれないようにしてください。罪悪感を持たないでください。この現代社会においては仕方がないのです。
ここらあたりのコントロールも精神科や脳外科のケースワーカーがやってくれます。
どうか、早く専門家のところへ行ってください。
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