お子さんのことですからさぞかしご心配なことでしょうね。
結論から申し上げますと、どちらの先生の考えも正しいということになります。
そもそも、くも膜のう胞はCTやMRIが頻繁に使われるようになってから発見された病気です。以前にも書きましたが、ほとんどのものが無症状に経過して、一生何事もないことが多い病気?です。
のう胞は大きく分けて二つのタイプになります。ひとつはのう胞の外側の髄液とのう胞の間に交通がないもの。もうひとつは、外側の髄液がのう胞との間で行き来するものです。
行き来する場合も二つに分かれます。入ってくる髄液と出て行く量が同じで、のう胞が大きくならないもの、入る量が出て行く量よりも多く、どんどんと大きくなっていくものの二通りです。(出て行く量が多いものは実際にほとんどありませんし、あったとしてもなくなってしまうわけですから考えなくていいわけですね)
こののう胞で問題となるのは、その袋状ののう胞に髄液がたまっていく場合です。袋がどんどん大きくなれば、脳を圧迫していろいろな症状を出すわけです。
多分、お子さんの場合は何かしらの症状が出ていたのだと思います。それで、手術で髄液をお腹の中へ流すシャントをしたということですね。(かつては、のう胞を切除する手術もありましたが、手術後また癒着して再発することも多く、僕も痛い目にあったことがあります)
で、このシャントの場合、のう胞がなくなったとしても本当にそれで完治かということが問題になります。つまり、のう胞がくっついてしまってもう二度と水がたまらないものか、そうではなくてシャントを抜くとまた水が溜まってしまうものかが問題になるのです。
その判定が難しい。
かつてはのう胞造影といって、シャントの管から、逆行性にのう胞内へ造影剤や放射性物質を入れてのう胞と髄液との関係を見ました。いまは、MRIだけで判定することも多いようです。
といってもこれですべてが分かる訳でもありません。
お子さんの場合、多分いろんな検査をされてのことだと思います。
現時点では、抜いてしまえる可能性もあれば、抜くとまた溜まってくる可能性もあるわけです。というのも、管が短くなっていても管の周りにトンネルができていて、そこを通って髄液が流れている可能性もあるのです。その場合は抜いたとしても問題がなかったり、あるいは、流れがやはり悪くなってまた溜まってくるタイプと・・・考えてもきりがありません。
整理をもう一度すると・・・2歳のときに入れたシャントが今も効いているかどうか。
これは、チューブはすでに長さが足りなくなっているのは確実です。問題はそのチューブの周囲に管ができていて底を髄液が流れているかどうかです。流れていればシャントの継ぎ足しになりますし、流れていなければ抜けばいいということになります。
また、流れていなければ無利に抜く必要もないという意見もあります。逆に、そういった異物が入っているとばい菌の温床になるので抜くほうがいいという人もいます。
かつては僕もよく抜いていました。ただし、局所麻酔でやりましたから、さほど患者さんには負担がなかったように思います。しかし、古いものですと、癒着が起こっていて全身麻酔になる可能性はありますので、そこの判断は難しくなります。
ですから、もう一度、シャントが流れているのかどうかはチェックしていただく必要はありますね。そして、最後は主治医と運命共同体でかけるという行為が必要になりますね。
そこで、折衷案としては、まずセカンドオピニオンとして手術をされた先生の意見を聞いてみることが大切になります。そして、それでもということになれば、たとえば、東京で言えば、僕の母校の慈恵医大の母子健康センターや全国の子供病院といったところの脳外科医に聞いてみるべきでしょうね。
僕個人としては、もう少し様子を見ましょうというかも知れませんし、データーをちゃんと見て、やっぱり手術しましょうというかもしれません。
結局、誰も決められないのかもしれません。
すみません、かえって混乱させたみたいで。ただし、様子を見て症状が悪化したらやりましょうというのは一般的な外科医の方針で大半を占めるようには思います。
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